「催眠療法」という言葉を聞いたことはないでしょうか。催眠療法は、催眠誘導によって意識状態を変容させる、心理療法の一種です。催眠状態では、普段では体験できない心地よさを味わったり、イメージを描きやすくなったり、過去の記憶を想起したりすることができます。
それによって、自我の働きや緊張を緩め、心身を深くリラックスさせる効果があります。また、催眠療法を用いることで、心のより深い部分や、潜在意識により直接的に働きかけることもできます。潜在意識とは、普段表に出てこない意識の部分のことです。
実はこの潜在意識は、私たちの意識の9割の領域を占めているといわれています。私たちの思考や行動は、知らず知らずのうちに潜在意識に大きな影響を受けているのです。
催眠療法では、膨大な記憶の中から、必要な記憶をすくいとって想起したり、普段意識することが難しい心の傷(トラウマ)や条件づけを解放したりすることによって、さまざまな問題を解消することができるのです。そんな催眠療法には、危険な「罠」も存在します。そこで今回は、催眠療法を使う前に、よく注意しなければならない危険な罠についてお伝えします。
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悪質なセラピストによる悪用に注意しよう
初歩的なことですが、催眠療法を受ける際には、本当に信用のおけるセラピストかどうかを見極める必要があります。悪質な催眠士によって、催眠状態が目的以外のことに悪用される可能性は十分あります。
たとえば、セラピストを信頼している女性クライアントを誘惑するために催眠状態が悪用される…等のケースがあります。ほとんどのセラピストが、催眠誘導に踏み切る前に、カウンセリングによる心理療法を実施します。
その際に疑問点・不安についてはきちんと確認をしながら、相手が本当に信用に足るセラピストなのか、知識・経験は十分なのかを見極める必要があるでしょう。
記憶捏造に注意しよう
催眠状態の手法の1つとして、「退行催眠」と呼ばれるものがあります。退行催眠とは、催眠状態で過去の記憶をさかのぼり、その中から現在の症状や問題の原因となっている記憶を探るものです。
苦痛となっている記憶を探り当て、言語化できれば症状は消失するとされ、古くはフロイトなども用いた手法でした。しかし、現在では問題点も指摘されています。
仮に退行催眠で過去の記憶を探り出し、言語化できたとしても、それが事実かどうかを確認することはできません。退行催眠では「過去に原因がある」ことが大前提になっています。
クライアント・セラピストの双方が症状を何とか解決したいと望むあまり、実際にはありもしない過去の記憶を捏造してしまう…というケースが発生しているのです。その危険性については、クライアント側もよく認識しておく必要があります。
催眠療法に適した精神状態かどうか、事前に面談を受けよう
催眠療法に適していない精神状態の人が催眠誘導を受けると、危険が生じるおそれがあります。ここでいう「催眠療法に適していない人」とは、たとえば、抑圧された感情のエネルギーが非常に強い人、現実的・客観的認識力が弱い人、統合失調症の人、潜在的な精神病を抱えている人などです。
こういった場合、潜在意識にアクセスすることで、むしろ症状を悪化させてしまい、収拾がつかなくなる場合があります。そうした危険を避けるために、きちんとしたセラピストであれば催眠療法の前に確認の面談を行うはずです。
心配なことがあれば事前に申し出ることが大切です。自身の精神的な問題を解決するために、催眠療法がベストの選択肢なのか、よく見極めるようにしましょう。